タレイランの力でクーデター
ナポレオンはエジプト遠征軍を敵前逃亡の形で抜け出し、パリに戻り、革命政府でクーデターを起こし独裁政権を樹立ました。この裏でそのサポートをしたのがタレイランでした。タレイランは反革命派のフランス王家と深いつながりのある人物でしたが、革命側を反革命側が取り返すことができないと考え、そのどちらとも言えないナポレオンに目を向けたと考えられます。タレイランはナポレオンより年齢が15ほど上で成熟していた部分もあり、政治的な根回しや政局の扱いに長けていました。彼がいたから、ナポレオンはクーデターに成功したと言われています。もちろん、出来たばかりのフランス革命政府は貧弱だったということもその原因の一つと思われます。
ナポレオン30歳にして、いきなりフランス革命政府のトップに君臨し軍団を率いて大陸を次々と軍事制圧していきながら、同盟を結び大陸を統一。事実上のフランス帝国の単独支配者となり、カエサルさながら憲法を改正し終身独裁官に就任します。
カトリックと和解、皇帝の戴冠式
さらに、その権威を確実なものとするため、哲学的には批判していたはずのカトリックとも和解し、ローマ教皇を味方につけ、戴冠式を行いました。この時、ナポレオンは、冠を教皇からでなく、自ら自分の手で戴冠したとされています。これは、カトリシズムに屈しないというメッセージと、ヨーロッパ最高権威を正当な後継者として、神の代弁者としての務めを行う覚悟というメッセージの両方が込められたと考えられます。一方で、カトリシズムと和解したという事実は、王侯貴族たちに対しても敵意はなく一つにまとまろう！というメッセージもあったと思います。このアイデアをナポレオンに提案し強く推したのもタレイランだと言われています。
イギリスとも平和条約を結び、ナポレオン法典を交付し、軍事力と政治的腕力を次々と発揮し、ヨーロッパ中の市民に自由と平等を与え、圧政から解放させ、自由平等を歌う国家群が誕生することになったのです。これが、ヨーロッパの歴史を劇的に変えた瞬間でした。
トラファルガーの海戦での大敗
ナポレオンは、大陸は制圧しましたが、イギリスだけが残ってしまい、制海権を奪われていました。これが大きな問題として残り、イギリス上陸を阻まれるだけでなく、海上封鎖を敷かれ、好き放題にされていたのです。そのイギリスを打破すべく、ナポレオンはスペインとフランスの最強の連合軍を作りイギリスに海戦を挑みますが、トラファルガーの戦いで、イギリスの英雄ネルソンに歴史的な大敗をしてしまい、イギリスに上陸を断念せざるを得なくなったのです。
大陸封鎖令とタイレランとの決裂
イギリスを直接攻める手段を失ったナポレオンは、イギリスに対して兵糧攻めをするしかなくなってしまいました。これが、大陸封鎖令でしたが、まだ支配して日が浅いヨーロッパ全土に、そんな、漏れのない大陸封鎖は無理すぎる政策で、実際に当時ナポレオンのブレインだったタレイランから猛反発をうけます。外交の天才だったタレイランは、徐々にナポレオンを見限るようになり、ナポレオンを裏切って連合軍を組み、ヨーロッパ全土対、ナポレオン個人という戦いで、ナポレオンを孤立させ、自殺に追いやるまでの仕打ちをしてしまいます。こカイサルを追いやったキケロとの関係と少し似ていますね。ナポレオンは、タレイランより人気がありましたから、タレイランが作ったルイ18世の新政権は、少ししか持たず、ナポレオンが復帰してしまいます。しかし、これにも、タレイランはすぐに対応し、イギリスも巻き込んで同じ方法でナポレオン個人の暴走だとして、世界中の連合を作り、ワーテルローの戦いにて、今度こそナポレオンを打ちまかし、イギリス艦隊によって、絶対に脱出できない大西洋の孤島セント・ヘレナに幽閉され、五年後に病気で死んでしまいました。
タレイランとその後のヨーロッパ
ナポレオンが幽閉されたあと、政権を担ったのがタレイランでした。彼は、事前にナポレオンの戦争が彼の独断だったこと、フランスを含むヨーロッパはイギリスと敵対するつもりはないことを伝え、長年に渡って現在に繋がるフランスとイギリスの固い同盟が結ばれたのです。