THIS IS X’MAS イエスの真の物語

師ヨハネ

10年以上の長い旅からナザレに帰ってきた30歳のイエスは、ガリラヤ湖で師ヨハネに出会いユダヤ系新興宗教の洗礼を受けました。師ヨハネは、現地の人々にとっては、スーパーヒーローの様な存在でした。

そのことは、歴史的バックグラウンドから想像できます。師ヨハネの育った時代、ヘロデ大王が死去し、ガリラヤ湖ではヘロデ王の息子ヘロデ・アンティパスが分割統治を行なっていました。アンティパスは、初代ローマ皇帝アウグストゥスの死後、ティベリウスが2代目ローマ皇帝に就任したことを記念して、ガリラヤ湖畔に皇帝の名を冠した「ティベリア」というローマ式の最新設備による都市の建設を依頼しました。しかし、建築中にユダヤ人の死体が何体も出土したため、古代ユダヤ人の墓地だったことが調査で判明したのでした。敬虔なユダヤ信徒は、墓地は不浄な場所として普段の生活とは切り離す考えでしたから、強引に計画を推し進めた結果完成したティベリアにユダヤ人が住み着きませんでした。しかし、人がいなくては、都市は死んでしまいます。そこで、アンティパスは解放奴隷や異邦人、異教徒などを大量に受け入れていったのです。当時の秩序は警察などがなかった代わりに宗教的な信仰によって守られていましたから、信仰の薄い人たちが集まるティベリアの治安は悪くなり、貧しい人の中に犯罪者が集まるスラムと化していったのです。これに嘆いたヨハネは、ユダヤ教を全ての人に開けていく必要性を強く感じました。当時の、ユダヤ教徒たちは、信仰を守らない異邦人や異教徒たちを全く寄せ付けない排他的な考えの人が多かった中において、ヨハネは「回心すれば、全ての人が救われる」という「回心」の考え方を導入し、ユダヤ人の子として産まれなくても何歳であっても、過去に犯罪を犯した人でも、誰でも「回心」すれば、ユダヤ人と同じように死後、神の国へ行くことができると説いたのです。そして、「回心」することを誓った人々に「洗礼」を与え、神の道へと導いていきました。これには、スラム化に悩んでいた無秩序だったティベリアの人々にとって多いに歓迎されました。師ヨハネがスーパーヒーロー的な存在だったことは、こういったバックグラウンドから容易に想像ができます。

イエスの洗礼

旅から戻ったイエスはこの、師ヨハネを見て同調し自らも洗礼を受け、この貧しいものや犯罪者にも寛容な新興ユダヤ教に大いに感心し、迎合しました。ガリラヤに残って宣教に熱心だった師ヨハネと異なり、世界中を旅したイエスは、さらに客観的な視点も持っていました。当時、外国の生の情報はかなり少なかった時代です。イエスは仏教にも触れたかもしれませんし、ギリシャ哲学にも触れたかもしれませんし、ローマ帝国のカエサルやアウグストゥスについての噂はたくさん聞いたはずです。ナザレの田舎街に戻ったイエスは、世界各地で学んだ医学を参考に病人を直したりもしていたと伝えられています。そして、近い将来ユダヤ王国がローマによって滅ぼされる可能性も説いていたとされています。カエサルやアウグストゥスの残虐非道な粛清劇は誰もが知るところでしたし、属州の反抗は決してみとめられず叛逆の恐れがあるものは先制攻撃にて徹底的に虐殺されてきた歴史を学んでいたからです。イエスは人々を救うために決してローマに逆らってはいけないと伝えようともしたはずです。さらに自分の発言がより影響力を発揮するためにも、人気のあった師ヨハネから信頼を得ることは重要と考えたに違いありません。

師ヨハネの処刑

しかし、師ヨハネは、イエスの洗礼後アンティパスによって処刑されます。伝承では、アンティパスが義兄の妻ヘロディアを略奪婚したことをヨハネが非難したことに妻ヘロディアが激怒し、処刑させたというのが定説ですが、もう一つの理由にアンティパスのヨハネ人気に対する嫉妬もあったかもしれません。また、水面下ではパリサイ派と呼ばれる伝統的ユダヤ教の有力者達からの批判も大きかったはずです。スラム街を統治しようとする新興宗教は伝統的ユダヤ教信者のトップ層にとっては許されないものでした。当然パリサイ派からアンティパスへの強いヨハネ批判のプレッシャーがあったことも想像されます。それら様々な要因が重なって師ヨハネは異例の斬首となったのです。ヨハネは予言による救世主キリストではないかと期待されていただけに、この処刑は、彼を支持していた多くの人にとって受け入れられざる悲劇でした。イエスもその中の一人でした。

キリストの変容

師ヨハネが処刑されたことで、イエスは彼の後を継ぐ形で、危険を覚悟の上で宣教の継続を覚悟します。幹部にガリラヤ湖の漁師達ペトロ、ヨハネ(弟)、ヤコブ(兄)、通訳係のフィリポや、会計係のユダらを迎え入れ、組織は徐々に大きくなっていきました。信者数も増えていくにつれ、いつか処刑という運命を辿ることはイエスにとって想定内の事でした。イエスの覚悟は徐々に人間離れし弟子達はそのイエスの姿勢に明らかな変容を見ました。処刑を恐れず、一人でも多く民を救いたいと真剣さを増す中でイエスは、ついにあるアイデアを思いつきます。イエスの教団幹部には徴税人のマタイや会計係のユダなどアンティパスと近い役人と繋がっている者もいました。これらの弟子から教団の弾圧と迫害が近づいていると察したイエスは、幹部らを集め計画を発表します。

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